11月のある土曜日:収穫と映画『サンドラの週末』

11月のある土曜日は、小さな発見や収穫が多い1日でした。同じ会社の先輩女性社員が通うジャズダンススタジオの発表会を兼ねた公演があるということで、大田区の下丸子にある会場まで行ってきました。その先輩女性社員とは、彼女が他部署から私のいる部署へ異動してきて初めて出会い、また他部署に異動してしまった一年半くらいの期間に同じ部署でお仕事して。とにかく嫌味のない余計さのない良い距離感の優しさがあって、ちょっとした会話の積み重ねで真面目で誠実な人だ!ということが確信できて。相手によって媚びを売ることもなく誰にでも思いやりの感じられる対応や佇まいも、年齢相応の落ち着つきも私の好みだし、これは許せない!という感覚も似ていて、もっと一緒にお仕事したかったなぁと思える人。その彼女が会社生活よりも重きを置いていると豪語するダンス。大人になってから始めたそうで、ジャズダンスとか創作ダンスとか。正直私はダンスのジャンルもわからないし前衛的なものに至ってはむしろ避けたいくらいなのだけれど、公演のご連絡をいただくと、彼女を応援したい一心で都合を合わせて行くようにしていて。彼女が他部署へ異動してから3回目の公演、誰か知り合いと一緒に行けたらと思ったものの、チケットの金額の問題もあるだろうし、彼女からの公演のお知らせを話題にしない現部署のメンバーに都合を聞くことは迷惑になるかもと考え、思い切って会社とは関係なく彼女との縁もない友人を誘って行こうかと思案していたところ、やはり異動されて今は別の部署でお仕事している先輩女性社員が行かれる予定との情報を入手。この先輩女性社員とは異動されてからも数回ランチをご一緒していて。友人と都合をつけるかはたまたこの先輩女性社員Nさんにお声をかけてみようかと思っていた矢先に、ばったりNさんに社内で遭遇したその場で相談して一緒に行くことになり、そして当日。
公演は13時からなので、下丸子でランチすることに。Nさんも私も下丸子は初めてで、お互いそれぞれが待ち合わせ時間より早めに到着して少し駅前を散策しようとして余裕をもって家を出ていたのに、公演のチケットを忘れて家に取りに戻ったせいで結局待ち合わせギリギリになっていた事実が発覚。Nさんとは気が合うようです。その失敗話をしていたNさんが「土日もいつもと変わらないつもりでいても、やっぱり金曜日でプツッと切れちゃうようになっているんだわって思って」と話していたのがすごく新鮮で印象的で。あぁなるほど、と。こんな大切なものを忘れるか…とただ呆然と汗をかいて終わった私にとって、起こるべくして起こったのよ〜というNさん的思考は、目からウロコで妙に納得して気が楽になりました。
Nさんと私は勤務形態というか職層が異なり、会社の方針によれば私の職層の働き方を目指して達成することがNさんの職層の課題。ですが、私が中途採用であることもあってか、同じ職層の社員よりもNさんの職層の方々に共感できる部分が多い。お願いされた業務を効率的に遂行することも考えながら黙々と取組むNさんが別部署へ異動と発表されたときは本当に残念でならなかったのです。今でも時々Nさんがいてくれてれば、Nさんだったなら…と懐かしく思うことがあったり。Nさんとのその日のランチは、Nさんがネットで探してくれたイタリアン、マルコという名のpizzeria。到着は12時前でしたが、先客には傘寿前後とお見受けするご婦人方、イタリアンでランチなんてオシャレ!
私もNさんもトマトソース好きという共通点があったのですが、トマトソースのパスタはショートパスタだったので、平打ち麺の仔羊肉とナスのミートソースもトマトベースとのことだったのでそちらにして、スカモルッツアという燻製チーズとモッツァレラとトマトのピザを選択。15分ほどして運ばれてきたお料理、スカモルッツアピザはトマトソースベースではなくてプチトマトがトッピングされたソースなしピザ。もっぱらサルバトーレクオモで薄焼きピザには慣れているのですが、こちらの薄さはそれ以上かも。ミートソースのパスタもトマト感は薄く、トマトソース系を期待していたせいでやや残念ではありましたが美味しく完食いたしました。ふと気づくと、店内は空席待ちのお客さんでいっぱいになっており、マルコさんは人気店だと推察。ふたりで2,200円の会計を済ませて足早に公演会場に向かいました。
開演開始15分ほど前に会場入りすると、500席ほどの6〜7割が埋まっているような状況。未就学児童からおじいちゃんおばあちゃんまで幅広い年齢層。根気よく舞台正面あたりで空席を探すと、前から5列目くらいの中央がちょうど2席空いていて無事着席することができました。入場時にいただいたパンフレットで、公演に出演する先輩女性社員Aさんが登場する演目をチェック…するまでもなく、ほぼフル出演とわかり。公演は2部構成で、第1部は設定が非現実というか幻想的、第2部は適切な表現ではないかもしれませんが、ミュージカルちっくでクリスマスムードの演出で観客も随所で手拍子しちゃう雰囲気、2時間弱の公演の最後にステージ上に勢ぞろいした出演者たちからは、感動、感謝、喜び、達成感等々、素敵な感情がビシビシ伝わってきて、観ているだけだったのに共感してしまうほど。Aさんはお仕事しながら振り付けを考えて覚えて衣装もデザインして製作して大勢参加のレッスンやリハーサルも自分の都合でというわけにはいかないからスケジュールの都合も大変だったはず。それこそ好きでなければできないことだけど、その好きなものがあって夢中になれて、ステージの上のAさんはキラキラ輝いていて、職場でもいつも元気で誰に対しても誠実なAさんの姿に全部がつながっているようにも思えました。
発見があったり良い刺激を受けた1日がそこで終わることなく。
Nさんの趣味のひとつは映画鑑賞で、この日も公演後に2本の映画を観に行くとのこと、ひょんなことから1本同行させていただくことになり、映画館のある飯田橋に向かいました。この日初めて利用した東急多摩川線、行きは蒲田から下丸子へ。途中、矢口渡(やぐちのわたし)という初めて聞いた駅名に、懐かしい演歌の曲名を重ねたのは私だけではないはず!とキョロキョロしましたが、周囲の乗客はみなさん至って無反応でした…。帰りは飯田橋なので、Nさん曰く反対方面の終点多摩川経由とのことで停車中の多摩川行きの電車に反対側ホームの改札から踏切を渡っても間にあって乗れてしまうコンパクトな下丸子駅に別れを告げて乗車。車内でちょっと談笑していたらもう多摩川線終点の多摩川駅到着、蒲田駅がなかなか立派な始発駅だったので、この程度の路線の短さにびっくり!次に階段を上ってまた上って乗換えた電車は西高島平行きだったりして不安いっぱいですが、Nさんによればこのまま乗ってどこかで乗り換えると飯田橋に行けるのだとか。そうして降りたのは白金高輪。最初に東急多摩川線に乗っていたはずが、ここで降りると反対側のホームはいつも間にか東京メトロ。改札は一度も通らずに3社路線を乗り継いだ模様。理解しようとせずに飲み込むしかない状況のまま飯田橋に着き、あっという間にNさんの目的地ギンレイホールに到着したのでした。
上映は2本立てで、Nさんは行く道のあいだ、私が時間的に鑑賞出来る方ではないもう一本の映画なら良かったのにと話してくれて。私が観ることができるのは休職中にリストラされてしまった女性の話、もう一本はコメディなのだそう。ギンレイホール会員のNさんの同行だと1,000円で鑑賞でき、ちょうど都内で2時間程度時間を消費したかった私にとっては映画一本はうってつけであり、しかも1,000円で鑑賞できるだなんてありがたいお話ですから、内容にあれこれ言うなんてとんでもないこと、リストラ映画のほうが観たいです!とNさんに力強く返答。
映画が始まる前、2週おきにギンレイホールに通っているというNさんのお休みの過ごし方をなんとなくお聞きしてみたら、お答えに意表をつかれてまたまたびっくり。青春18切符を利用して行ったことのない土地を訪れていて、最近では越後湯沢や新潟市に行かれたと。私なんて、そもそも青春18切符って?という無知さ。Nさんの息子さんが買ってくれたそうで、特急には乗れないから、鈍行でひたすら何時間もかけて目的地まで向かうのだそう。今度は名古屋まで行く予定なんだとか。「ひたすら乗り継いで。だから、行きは始発で帰りは終電でとか」とNさん。…えっ?まさか日帰りで?!…じゃないですよね?くらいの確認のつもりでお聞きしたら、「そう、日帰りです」と嬉しそうなNさん。私には考えられない話で、何が彼女を動かすのか俄然興味が湧いてきて質問攻め。Nさん、目的地には早く着きたいという気持ちはあるけれど、車窓の風景を眺めるのがお好きなのだそう。なるほどねー。スマホも持たずにそんな1日を過ごされているNさん。あの分厚い時刻表で綿密に計画しているのかと想像すると、Nさんの驚くべき行動力になんだか頭がさがる思いです。職場で黙々と効率を考えてお仕事されてる姿だけが全てではなく、車窓を何時間も楽しむという想像できなかった姿も持っている。人って深い生き物だなぁ〜と妙に感動…一方で、休日は家でぼんやりと平日の会社生活のガス抜きするだけで終わることも多い私、私は家にいるのが大好きだからとNさんに話すと職場での私からは想像できない姿なのか、えっ本当に?!とこちらが驚くほどびっくりされた反応、そのまま映画上映スタート。
自宅らしきダイニングに座る女性に電話がかかってくるシーンから始まりました。電話の内容はこちら側にはわからず、女性は短い応答だけで一本的な感じで電話を切ってしまい、泣いてはだめ、と独り言を繰り返す場面から、聞きたくなかった話、ということは伝わってきます。休職中にリストラされてしまった女性の話…と前知識はあったので、早速その事実を知らされたということでしょうか。泣いてはだめと独り言を繰り返したり薬を飲んで落ち着こうとする行動から、メンタル面の問題で休んでいたのかなぁ?と想像。後々の会話から鬱病であったことがわかってきます。自宅らしき家に、男性が入ってきます。サンドラ、と女性に呼びかけるので、女性の名がサンドラであることが判明。ちなみに映画の邦題は『サンドラの週末』。この男性が登場してサンドラとやりとりがあることで、サンドラの職場の同僚の投票でサンドラのリストラが決まったことがわかります。投票の内容は、ボーナス支給かサンドラの復職かという二択。サンドラが復職するならボーナスは支払えないということで、ほぼ全員がボーナスを選択。このあとのやりとりの中で色々わかってくるのですが、サンドラ夫婦には子供が2人いて、旦那さんは飲食店の店員、サンドラが復職しなければ支払われるボーナス額は1,000ユーロで同僚は16人。サンドラの復職に投票した同僚女性が、投票は主任が圧力をかけて投票させたのだから無効にするべきと社長に直訴しよう!ということを伝えるため、サンドラとサンドラの夫に電話をかけてきたというわけです。仕方ないと泣き続けるサンドラに、夫は自分の稼ぎだけでは暮らしていけないからサンドラに仕事を辞められては困ると事態の打開を説得。また公営住宅に戻ればいい、と言うサンドラに、あそこにはもう戻りたくないと即答する夫。…うーん、夫が登場してからなんだか微妙な気持ちになってきました。どうやらマインドが強くはなさそうな妻に、生活水準を落としたくないから君も働かなければと主張する夫。休職するほどのサンドラの病状が気になりますが、医者はもう働けるって言ってるのだからとの発言もあり、夫がサンドラの具合を気にかける様子は見られないのです。夫にどうにかこうにか説得されたサンドラは夫が運転する車でサンドラの職場に向かいます。そこにはサンドラと夫に連絡をくれたサンドラ支持の同僚女性が待っています。同僚女性が社長に状況説明すると、社長はサンドラに意見を求めます。そこでうまく自分が思うように話せないサンドラでしたが、今日金曜日に主任によって実施された投票は無効として土日の休日が明けた3日後の月曜日に無記名の再投票を実施すると社長は決めます。そこで過半数以上がサンドラの復職に投票すれば、ボーナス支給はなくなりサンドラが復職する、と。
この時点あたりくらいまでの登場人物、サンドラ、サンドラの夫、サンドラ支持の同僚女性、勤務先の社長の4人の会話の中で、サンドラが勤めるのはソーラーパネルの組み立て工場、近年アジア勢の台頭で業績は思わしくなく人件費削減が必要、投票の際にサンドラが復職しても別の誰かが辞めることになると主任が圧力をかけたらしい、サンドラ以外の16人の従業員で週3時間の残業が発生しており人手が要らないわけではない、という事情などがわかります。月曜にサンドラの復職に投票してくれるようにみんなを説得するんだ、という夫。サンドラ支持の同僚女性も住所を調べてくれると協力態勢。みんなボーナスが欲しいに決まっていると拒否していたサンドラですが、翌日から渋々同僚の家を訪ね周ります。旦那さんが車を運転しての訪問活動で無理矢理連れて行かれていると思えなくもないけれど、ボーナスに投票した同僚に対峙するのはサンドラ1人で。
その15人の同僚たちにはそれぞれの事情や思いがあって、突然自宅に現れたサンドラを快く受け入れる人もいれば居留守を使う人もいたり会わずに電話で済ませたり。快く受け入れてくれても経済的な苦しさからボーナスに投票するとはっきり伝える人、ボーナスに投票したことを泣いて詫びて月曜は必ずサンドラの復職に投票すると約束する人、とりあえず考える素振りはみせてくれる人、意見が対立して息子に殴られて気絶する父とサンドラに怒りを爆発させて静止する父親を殴って逃げる息子といった親子、16人で仕事は回って残業代ももらえるのに自分の復職に投票する人がいると思っているのかと冷静に正当論を投げかけてくる人、本当に様々。そんな状況なのでサンドラのやる気にも上昇下降があって。移動中に悪夢を見たり泣いたり夫と言い争いになったり。夫との言い争いでは、物乞いみたいなことしたくない、復職したところで合わせる顔がない、鬱病で使い物にならないと思われているのにお願いするだけ無駄、投票当日に職場で会って話せばいい、等々訴えるのですが、夫はそれらの訴えには答えず、過半数まであと何人だから頑張ろう、と都度ひたすら説得。最終的にはサンドラはとある出来事で俄然やる気になります。その出来事というのは、1人の同僚女性がサンドラの突撃お家訪問をきっかけに人生のターニングポイント迎えて大きな決断をしたというものです。日曜日のお昼前、サンドラは夫に連れられてその同僚女性の自宅に。呼び出しに応答はなく帰りかけるサンドラを呼び止めた女性は音楽を聴きながら自宅のリフォーム作業をしていて気付かなかったとサンドラを温かく迎えます。サンドラは金曜日の投票が無効になったので月曜の無記名再投票で自分の復職に投票してほしいと他の同僚と同じように用件だけを伝えます。同僚女性は、買ったばかりの家のリフォームが必要であってボーナスをそれに充てるとご主人と決めていたようでしたが、主人が戻ってきたら相談してみるから結果を連絡しようか?とサンドラに提案。サンドラは浮かない様子で軽くお願いをし、同僚女性はお昼には電話すると親身な様子でサンドラを見送ります。サンドラはその後に訪ねた同僚にもボーナスに投票すると断言されてまたがっかり。落ち込んだサンドラに、あの彼女から電話がかかってこないからまた行ってみようと夫は提案し、親身だった同僚女性の家を再び訪ねます。すると、その夫婦はその件で言い争いとなって結論が出ておらず、同僚女性は説得を続けると。するとご主人がサンドラの前に現れ、うちに面倒を持ち込むな!とサンドラに怒鳴りつけ、同僚女性は乱暴に家の中に引っ張り込まれてしまいます。その出来事で立ち直れなくなったしまったサンドラ、まだ会えていない同僚もいるのですが、家に帰ると夫に告げます。
帰宅したサンドラは、子供部屋を整頓し、寝室を整え、手元に残っている抗鬱剤と思える薬をすべて飲んでベッドに入るのですが、階下の夫に呼ばれて断りきれずに降りていくと、そこに居たのは夫とあの親身な女性。彼女は月曜はサンドラの復職に投票するとわざわざサンドラに伝えにやってきたのです。それを聞いたサンドラの第一声は、薬を全部飲んでしまった、と自殺行為の申告。場面はそのまま病院に。胃洗浄も済んだのか、お腹が空いたから食事したいという点滴中のサンドラが食事をしながら訪ねてきてくれた親身な同僚女性のことを夫に尋ねると、病室の外で待っているとのこと。退院する頃にはすでに日は落ちて真っ暗、夫の運転で家まで送ると告げると女性は衝撃発言、離婚するからあの家は出てきたので帰る必要はない、と。家を買って子供をつくろうとしていたところであったものの以前から疑問はあったのでしょう。それが今回のサンドラ復職に関する夫との衝突で、自分らしく生きたいと答えが出たのだと後悔のない様子。行くところのない彼女はサンドラの家に泊まることになり、車の中でロックミュージックを流して3人でグロリアを大合唱。そうそう、この映画ってバックミュージックをほとんど使っていないのです。どんなシーンも出演者の胸中や状況は、演出に左右されることなく観ているそれぞれの観客が勝手に感じて良い。でも、このグロリアという曲がカーラジオから流れてきた時、ここだけは観ている全員が、3人から湧き出る闘志とか将来を楽天的に考えているということとかを感じされられたと思います。このずっと前の場面で、もう一曲、カーラジオから流れる曲がありました。その場面ではサンドラは自分の復職への投票を断られて落ち込んでいるように見えるのですが、旦那さんがカーラジオを切ってしまいます。旦那さんのこの行為に対して、過保護ね、とサンドラ。悲しい曲だから消したんでしょう?とまたラジオをつけるサンドラ。歌詞の和訳からすると、今をそして未来も悲観的であるというような歌詞。私も当然サンドラの夫と同じ心境でサンドラには聴かせたくはない曲だと思ったのですが、敢えてこの曲に向き合ってそんなに自分は弱くないという一面を見せるサンドラに安心して期待した場面でした。場面を戻します。同僚女性の大きな決断で気持ちが奮い立ったサンドラは、退院後にも残りの同僚男性に会いに行きます。彼はボーナスには拘りはなくサンドラの復職に投票すると一旦は口にしたものの、サンドラの復職に投票することが会社に悪く思われることがないかとしきりに気にしています。サンドラは無記名投票だからと説明するのですが、契約社員である自分は次回契約更新への影響があるのは困ると。投票日当日に自分と同じく9月に契約が切れるもう1人の契約社員に相談して決めると答えを保留します。
この時点でサンドラの復職に投票してくれる同僚はわずかに過半数に届いてきません。会えていない同僚、答えを保留している同僚は一体どちらに投票するのか。そして投票日当日の朝、職場には16人の同僚と主任とサンドラの姿があり、サンドラは土日に会えなかった同僚に最後のお願いをしています。投票結果に影響するからと、サンドラと主任は退室に同意して2人で投票会場の部屋を出ます。サンドラは、金曜日の投票で誰かが辞めることになると圧力をかけたと聞いたと主任を非難します。すると主任はそんなこと言うはずがないだろうとサンドラに誰が言っているのか詳しく聞こうとします。サンドラは聞く耳を持たず主任に背中を向けましたが、私は主任の様子から本当にそんなことは言っていないのではないかと思えたのですが真相はどうなんでしょうね、そこは明らかにはなりませんでした。そして投票結果は8:8。無記名投票でしたが、サンドラの復職に投票したと思われる同僚たちが部屋でサンドラを待っていました。日曜の夜に会いに行った契約社員の男性も結局サンドラの復職に投票したようです。過半数とならなかったのでサンドラの復職はなくなりボーナスが支給されることになりました。サンドラは迎えてくれた同僚に感謝を伝え、潔く私物の片付けを始めます。涙もなく、しっかりした様子です。そこに同僚ではない別の職員が現れてサンドラに社長の部屋に来るように伝えます。社長とサンドラ2人きりとなり、社長は投票結果に驚いたとサンドラの健闘を称えて人望を認め思いもよらぬ提案をします。投票結果で決まったとおりサンドラに辞めてもらうがそれは一時的で9月に契約期間満了となる2人は更新せずにまたサンドラに戻ってきてもらうというもの。サンドラはこの社長の提案を即答で断ります。自分の代わりに誰かが辞めさせられるのでは意味がないと。辞めさせるのではなく契約期間の満了だと社長は説明しますが、サンドラには納得できません。そのまま席を立って退室するサンドラ。
建物を出たサンドラが、8:8、善戦したわよね、と歩きながら電話してきる相手はきっと旦那さんで、職場を振り返ることもなく顔をあげて前に前に踏み出しています。サンドラにも電話相手の旦那さんにも失望はなさそうだし、さぁ新しい働き先を探そうという意欲も感じられる。それが映画の結末。
金曜日に泣いてはダメと言いながら泣きじゃくり日曜日の午後に自殺未遂までし、くよくよし通しだった印象のサンドラが、月曜日の朝にはプラス思考の別人に変わりました。最初は頼りなく見えた旦那さんは、愚痴も言わず非難もせず見放すことなく穏やかにサンドラを支え続けました。結局は職場復帰できなかったけれど、嫌な気分で終わらなかった映画。この先サンドラには仕事が見つかるような気もするし、見つからなかったとしても彼女が後悔することはないだろうし旦那さんはずっと優しいだろうって思えました。
この映画の舞台は一体どこの国だったのでしょうか。職場の同僚と別れるサンドラは決まって、メルシー、サヴァ、と挨拶をしたのでフランス語圏のどこかの国。時期はおそらく6〜8月あたりで、サンドラの服装はほぼずっとタンクトップにジーンズ、靴下とショート丈のブーツを履いていました。そう、タンクトップ姿。社長への直訴の時も自分の復職への投票依頼で同僚宅を訪ねる時も、ブラジャーの紐が丸見え。私の状況に置き換えるとなかなか考えにくい服装ですが、そのあたりは文化の違いなのでしょう。追い込まれて同僚にはボーナスを諦めてくれと説得している状況の中でアイスクリームを食べるというサンドラ夫婦に気持ちも離れたし、休職して迷惑かけないように注意するとか今まで以上に仕事に取り組むとかマニフェスト的なオマケもない、手短に自分の復職に投票してほしいとだけの説得も少々受け入れ難い。私だってみんなと同じ立場なんだとか復職は当然だという心理なのかもしれないしルール違反的なモラルなのかしれないけれど、ただ策を講じないだけではないかしらと思えなくもない、そんな阻害要因もありつつの鑑賞でした。ですが、実に何気ない正論やちょっとした言動が他人を傷付けることもある、普段から人助けすれば困った時に返ってくることもある、自分に損であっても正しい決断は自分を輝かせる、ということを学んだ気がします。日頃の対人問題やストレスのせいで全員が敵に思えたりする瞬間も度々ある。でも人は人によって生かしてもらっている。苦手だなと思える人に限って良いところもたくさんあるはず。そんなことを考えることもできたり、収穫の多い1日になりました。
サンドラを演じたのは、世界で最も美しい顔100人(tccandler - BEAUTIFUL FACES)の2013年1位のマリオン・コティヤールだったと、エンドロールを観て知りました。よくよく思い返せば、すらりとした抜群のスタイルや素顔でもわかる整った顔立ちは、隠しようもなかったのですが。騙された!というか、美女であることを感じさせない女優魂を見せたもらったなぁ。
このあとはいつもと変わらぬとある土曜日の過ごし方だったけれど、誰かを応援したいという思いで腰をあげてみたらなんとも意義のある時間をここまで過ごせて収穫がいっぱい。またこんな時間を過ごせる機会を逃さないようにしよう。