映画「La La Land」鑑賞

話題の映画「La La Land」を観て参りました。観るのは全然乗り気ではなかった。何故なら、ミュージカル映画だから。歌って踊る出演者を観てどんどん醒めていく自分、を想像できるから。それでも、各上映会が次々と満員になっていく様子を目の当たりにして、まぁ観ておいてもいいのかな…という気持ちで鑑賞。
冒頭の本当に初めのほう。あぁやっぱりなぁと思いながら観ていました。なんとなく懐かしいような色使いで、フリーウェイのドライバーたちが歌い、揃って踊る。思っていた通りの昔ながらのミュージカルの様相。それに、今っぽさが加えられて、少しスピード感もあり。出演者の衣装はステージ衣装のようにシンプルで鮮やかな一色使いな場面も多い。そうして始まったけれど、思っていたよりもミュージカル感は抑えめで、慣れもあってか、突然歌い踊るという不自然さを感じることはありませんでした。ミュージカルはちょっと…と思っている人にもオススメしたい。
しっかりしたストーリーのある展開、どんどんネタバレしますよー





エマ・ストーン演じる女優になることを夢見るミアと、ライアン・ゴズリング演じるジャズをこよなく愛しジャズバー経営を夢見るジャズピアニストセブの出会いは最悪。大渋滞のフリーウェイの車中でオーディションの練習をするあまり、運転が疎かになったミアに、後ろからクラクションを鳴らして苛立ちをぶつけるセブ。それを覚えているかいないかは分からなかったけれど、二度目の出会いはさらに酷い。クリスマスの夜、ピアノ生演奏のあるレストランで、客のBGMとしてクリスマスソングを弾くことを約束されられたセブは、我慢できずに演奏リストにない曲を弾いてしまう。その店の前を通りかかり、中から聴こえてくるピアノのメロディに惹かれて店内に入ったミア。しかし、セブは約束を破ったために許しを乞うもあえなくその場でクビになり、演奏を聴いて声をかけようとしたミアにまたもや苛立ちをぶつけて立ち去る。呆れるミア。季節は過ぎ、とある退屈なパーティーに出席したミアは、余興で80年代ヒットソングを奏でるバンドメンバーの中に、古めかしい肩幅が強調された現代では滑稽な服装でピアノ演奏をするセブがいるのを発見。リクエストが募られ、ミアはわざとシンセサイザーがフューチャーされたニューロマな曲をリクエスト。クリスマスの夜に自分が失礼な態度をとったその女性が目の前のミアであることに気づくセブ。セブの演奏でノリノリダンスするミアが可愛い。恥ずかしい思いをさせられたセブはパーティー会場でミアを探し出し、初めて会話するお互いの印象は悪いけれど、なんとなく軽妙でもあり。この時点でセブは少しミアが気になっているはず。セブはパーティーの帰りがけにミアに声をかけられて、ちょっとした窮地にいるミアをなんとなく救ってあげることになるんだけど、実はミアと色々話をしたかったことがセブの車の駐車場所から伺えて可愛かったりします。このシーン、一番好きかも。実はセブの車はパーティー会場のすぐ前に停めてあったのだけど、それを隠してミアの車が駐車してある小高い丘の上まで歩き、会話が続く。内容は当然ロマンティックでもないし、気分のいいものでもないのだけれど、弾む。ドライビングシューズを取り出すのかと思いきや、タップダンスシューズに履き替えたミア、セブと息のあったダンスを踊り出すのだけれど、これがワンカットで撮影されていて長回しっていうのかな、ふたりきりでのダンスなのだけど、なんだか圧巻。自分の車が見つからないミアに、キーをあごにあてると自分の頭がアンテナになって反応すると教えるセブの言葉に素直に従ってやってみるミアが可愛い。と、セブも思ったはず。ふたりは必要もないので次の約束もしないまま、できないまま別れるのだけれど、会話の中でミアの職場が撮影所内のカフェであることを知ったセブが堂々と現れ、それまでとは打って変わって好意を示すところがなんともほっこり。もう憎まれ口も叩きません。このあたり、男らしいセブ。ミアの方はやや面食らうのだけれど、付き合って間もない彼氏との約束の入っていた日であったにも関わらず、同じ日にリサーチと称してセブと映画を観る約束をしてしまい、セブに惹かれていることが伺えます。これはリサーチだと確認し合うふたりのぎこちなさがくすぐったい。デートではない、なかったはず。お互いの連絡先も知らないまま映画館で待ち合わせしたふたり、時間になっても現れないミアの事情が分からず上映の始まった映画を観て待つセブの服装は完全にデート仕様。一方のミアは、彼氏、彼氏のお兄さんと彼女との会食でも心ここに在らず。そこで、クリスマスの夜にセブが弾いていたあの曲が流れ始めて…。もう気持ちが抑えられない。ごめんなさい、と席を立ち、映画館に向かいます。ドレスアップしているミアがセブを見つけるためにスクリーン前に立ち、セブは座席で立ち上がって嬉しそうな表情。映画にも集中できず盛り上がった気持ちが抑えられないミアの手が落ち着かない。それに気づいたセブ。そっとミアの手に自分の手を近づけ、ミアもそれに気付き…
いいなぁ、ときめきますね、こういうシーンは。いつの時代もどの年代でもあってもキュンとします。
映画館ではアクシデントでキスまでたどり着けなかったふたりですが、グリフィス天文台で過ごす時間が決定的になって、そこからは誰にも止められません。付き合いはじめのラブラブ時期が一気に過ぎ、デートと語り合いを重ねて季節は過ぎて、現実的な問題にも気付く段階に。セブのジャズクラブ経営の夢。もう若くないふたりには、この夢が砦になっている。ミアは店名も一方的にセブズと決めて、ロゴマークまで考えている。そしてミアも女優になる夢を捨てていない。ふたりの将来のためには、理想ばかりを宣っているわけには行かず、セブは昔の知り合いの誘いを受け、不本意ながらもジャズとはかけ離れたバンドのキーボード奏者として契約し、デビュー後に成功をおさめて忙しい生活が始まります。オーディションに落ちまくるミアは、カフェも辞めてセブに勧められた脚本作りを完成させて自分1人の舞台を計画、それに没頭するため、ツアーについてきて欲しいというセブの誘いを申し訳なく思いながら断る。さらに、かつてセブからジャズへの深い思いを聞いていたミアは、今セブがやっていることは本当にやりたいことなのかとセブを問いただしてしまい、せっかくの久々のふたりきりで過ごす時間に大げんかをしてしまいます。悲しい…。うまくいかないね。
そして2週間後、ミアの舞台当日。もちろん仕事が終わって観に行くつもりのセブでしたが、なんと撮影が入っていました。日程を勘違い。撮影の内容もなんだかなぁでしたが、終わって急いで向かうも舞台はすでに終わっていて、劇場から立ち直れないほど落ち込んだミアが出てきました。舞台の様子も何がミアに起こったかも知る由のないセブが、ミアに的外れな謝罪や励ましをして、ふたりの気持ちはさらにこんがらがっていきます。感情的になったミアは夢もセブとの将来も投げ出し、もうおしまい、故郷に帰るとセブに告げ、取りつく島もなく、セブの元から去っていきます。
お互い連絡も取ることなくそれぞれの生活が続いたある日。まだ寝ているセブの電話に、ミア宛の電話がかかってきます。起きることもなく、もうミアに取り次げないくなったと話す相手が、ミアの1人舞台を観てオーディション参加を依頼するために電話をかけてきた配役プロデューサーだとわかり、セブの態度が一変し、起き上がります。
ミアの故郷の実家、セブがミアを迎えにきたことを知らせるおきまりのクラクションが鳴り響きます。久々の再会も、冷めた様子のふたり。ミアはもうオーディションは受けないと固い決意。でもセブの思いは熱い。明日17:30からオーディションだから朝8時には迎えに来る、と一方的に言い放って去っていきます。セブの去り際にミアが、なぜ家の場所がわかったのか聞くと、図書館の前だって言ってたろ、とセブ。かつてなぜ自分が女優になりたいのかをセブに話した時にちょこっと出ただけのことをちゃんと覚えていたセブ。翌朝8時ちょっと過ぎにミアの実家に到着したセブ、ミアの姿がないので去ろうとすると、ふたり分のコーヒーを持ったミアが現れ車に乗ります。ミアの女優になりたい話をセブがしっかり覚えていたことに、ミアの頑なな気持ちが変わったということなのでしょう。巧い脚本だなぁ。
ミアは無事オーディションを受け、そのオーディション内容は脚本作りもするミアに向いた内容でもあり。オーディション後、セブとミアはふたりの今後について話し合います。セブはミアがオーディションに合格すると信じていて、撮影場所のパリは遠く期間も長く、ミアはそれに集中する必要がある、ふたりの今後ことはわからないと言います。ミアはそれを受け入れ、セブに、ずっとあなたを愛してると告げ、セブもミアに自分もずっと君を愛していると伝えます。なんとオーディションの結果は観客の想像にお任せ…になっているのですよ。季節が変わり、5年後!
ミアがかつて働いていた撮影所内のカフェに現れたのは、カフェのスタッフや客たちの注目を集めるミア。撮影所の俳優用のカートに乗って去っていきます。自宅に戻ったミア、迎えたのはいかにも優しそうなしっかり落ち着いた年齢の男性、そして部屋には幼い娘が。男性は旦那さん?これ、映画撮影?現実?…現実です。一方のセブ。ジャズバーらしき店内でバンドマンと話すのは、店のオーナーらしきセブ。充実している様子です。ある夜、ミアは娘を家政婦らしき女性に託して、旦那さんのエスコートで出かけていきます。街中には、ミアが主演する映画の大きな告知ポスター。ミアが結婚して子供も設けた上に主演女優になるまでの成功もおさめていることがわかります。ロサンゼルスのフリーウェイは相変わらず大渋滞で、ミアの提案を旦那様は穏やかに受け入れ、途中でフリーウェイを降りて食事することにします。食事を済ませて車に乗り込もうとするミアを、旦那様が道の先に促します。そこにはジャズバー。おそらく旦那様はミアがジャズが好きだと知っていて、ジャズバーを見つけたから、入ってみる?と、そんな気遣いをしてくれた。超優しい旦那様。この僅なシーンだけで、旦那様に申し分ないことが伝わってきますよ。ミアが幸せなことも。
ジャズバーの入り口に立ち、ミアは驚きます。そこには、セブズ、のネオンサイン。ミアが店名はセブズに決まりだと嫌がるセブに話していたシーン、スクリーンを見つめる全員の頭の中に蘇ったことでしょう。鼻の奥がツーンとした瞬間です。
旦那様に促されてステージ前に座るミアは、あたりをうかがいます。ピアノを弾いているのはセブではない。演奏が終わり、ステージに登場したセブ。演奏者に賛辞を送り、客席にいるミアに気づきます。沈黙。客席、ミアに向かって発したのは、セブズにようこそ、の一言でした。そのままピアノの前に座るセブ。演奏と開始と同時に、現実とは違う世界が始まります。
その世界で起こること。クリスマスの夜、店をクビになったセブに近づくミアにセブはキスをします。オーディションに合格したミアは、セブと一緒にパリに向かいます。パリにいるセブは本当にやりたかったジャズピアノ奏者です。セブとミアは結婚し、ふたりの間には男の子が産まれます。そして今夜、ミアをエスコートしてジャズバーに連れてくるのはセブです。ミアの隣に座るのはもちろんセブ。
演奏が終わり、現実に戻ります。ミアの隣にいる旦那様はセブではありません。もう行く?まだ聴いていく?ミアに問いかける旦那様はセブではありません。もういいわ、とミアは席を立ち、旦那様の後ろについて歩き出します。店を出る前に振り返ってセブを見つめるミア。ピアノに向き合っていたセブもミアを見つめます。お互い、微笑み合い、小さく頷き合い、映画は終ります。
これでいいんだよね。自分は幸せだよ。あなたも幸せだね。
そんな無言の会話がされているように思えるラストでした。
これをハッピーエンドと言い切れるかは微妙ですが、酸いも甘いもあって、ふたりは生涯を共にすることはなかったけれど、夢を叶えて幸せに過ごしていて、嫌な気分にはならない結末でした。